一般社団法人 出版文化国際交流会 Publishers' Association for Cultural Exchange (PACE), Japan 本文へジャンプ


第17回ソウル国際ブックフェア

報告:佐藤 佳苗(出版文化国際交流会)



名  称
17th Seoul International Book Fair
会  期
2011年6月15日(水)-19日(日)
入場時間
15日(水)9:00-18:00
16日(木)10:00-19:00
17-18日(金・土)10:00-20:00
19日(日)10:00-17:00
会  場
COEX(韓国総合展示場)
展示面積
14,733m2
主  催
大韓出版文化協会
出 展 数
572社(昨年596社)
参 加 国
23カ国(昨年同)
アブダビ、サウジアラビア、フランス、中国、台湾、日本、フィリピン、アメリカ、
イタリア、ベトナム、シンガポール、イラン、ドイツなど
入 場 者
130,577人(昨年 120,020人)
入 場 料
一般・大学生: 3,000ウォン(210円)(1 円≒0.07ウォン)
小・中・高生: 1,000ウォン(70円)

 昨年秋には、今年はこのソウル国際ブックフェア(以下SIBF)ともう一つ、パジュ出版都市でも図書展が開催されるとのうわさが出て、その場合はどちらに参加するのか、我々も動向を気にしていたが、結局パジュの方は国際図書展とは性質の異なるものになるらしいとのことで、今回も引き続きSIBFへの参加となった。
 図書展主催者との意見の相違から、韓国有力出版社の出展が少なくなったと言われていたSIBFだが、主催者である大韓出版文化協会の会長となったユン・ヒョントゥ氏(汎友社会長)が、自らの出版社があるパジュ出版都市の他の出版社にもSIBFへの参加を呼びかけた結果、いくつかの社がまた出展を始めたそうだ。


(1)会場

 そのパジュ出版都市は、今回SIBFでも出展し、大きな地図や航空写真、パンフレットで様子を伝えていた。また結局図書展の形態はとらないというもう一方についてもパンフレットがあったが、ハングルでしか作られていないところからも、とりあえず国内向けの企画とうかがえる。本会理事で、出版ジャーナリスト、韓国出版事情のスペシャリストである舘野さんによると、「パジュ・ブックソリ」という名のブックフェスティバルで、主催はパジュ・ブックソリ組織委員会、地元自治体が大規模な支援をし、毎年10月開催とのことだ。テーマを決めた様々な特別展や催しが目玉となるらしい。
 会場全体でみると、昨年に比べ全体の出展者数は減ったものの、参加国数は変わらず、そして昨年より少ないのではと感じられた入場者数も、約1万人も増えたという。テーマ国は今年はなしで、その点が寂しい印象だった。テーマ国としてEUが予定されていたが、結果的に参加は見送られたそうだ。
 2ホールのうちのひとつが児童書専門となっていて、教育熱心な親たちが子供のためにいろいろと購入していく。また電子出版関連ブースは、専門の見本市が他にあるためここでは少ない。韓国の出展社は、どこも来場者への割引販売を競うように行なっていて、来場者呼び込みにとても熱心だ。


70%の割引も
70%の割引も


 一方外国からの出展ブースは、日本からの各社を除いては、版権交渉というよりは図書紹介・文化紹介的な様子。アブダビやフランス、台湾は立派なブースをしつらえ、サウジアラビアは今年も広い。どこも面積の割に図書を少なくゆったりと配置している。床に置いたダンボールの上に覆いをかけところ狭しとその上にまでぎっしり展示しているのは日本くらいのものだ。どこも販売はしておらず、例外的に現地書店が入って販売を行なったのは日本とフランスのブースだけだった。
 本会が取りまとめをさせていただいたトーハン、文藝春秋、ポプラの3社の他、今年は一部招待もあったようだが、昭文社、青幻社、岩波書店、サンマーク出版、タトル・モリエージェンシー、東京ブックフェアが日本から出展し、版権交渉などのミーティングで一日中忙しくされていた。


(2)特別企画
 今年の特別展示としては、以下のものがあった。
ユネスコ世界記録遺産でもある八万大蔵経の初彫版『初彫大蔵経』が作られてから今年で1000年にあたるのを記念し、解説や関連書を展示した「韓国のユネスコ世界記録遺産」、日本もこのコーナーに出品を直前に要請され東京や東北など10点の写真集を提供した「本を通してみる世界の都市」、あまりに精巧で豪華な作りにため息をついてしまう「世界のポップアップ本」、ちょうど100年前に生まれた8人の作家たちの作品を集め「生誕100年の作家」、「少女をテーマにした韓国の児童書」、「韓国子供コミック」、例年大人気の「イラストレーターの壁」、「ボローニャ・ブックフェアのラガッツィ賞受賞作」。


八万大蔵経
八万大蔵経


 講演、セミナーもいくつも行なわれていたが、そのうち日本関連のものとして特筆すべきは、まる一日かけて行なわれた韓国出版学会主催のセミナーだ。星野渉(文化通信社編集部長)、金基泰(世明大学教授)、樋口清一(日本書籍出版協会事務局長)、関正則(平凡社東洋文庫編集長)、舘野(前述)、李亀鎔(KLマネジメント代表)、矢口博之(東京電気大学教授)、李チャンギョン(新丘大学教授)の日本側5名、韓国側3名の各氏が「韓・日出版 著作権の現況と発展方策」をテーマにそれぞれ報告した。両国の著作権法規定について、電子出版事情、日本における韓国文学出版推進について、の主に3つが取り上げられ、中でも日本での韓国文学出版点数増加のためには何をすべきかについて、両国での翻訳推薦図書の選定や詳細にジャンル分けした韓国図書目録の作成など具体的な言及があったが、今回の会議は互いの問題点を出し合う相互認識に留まり、引き続き今後も韓日交互で話し合いの機会を設ける提案がなされたという。
 また会場内に設けられたコーナーでは、サンマーク出版の版権担当部長武田伊智朗氏が韓国実用書の翻訳出版経験というテーマで講演を行なった。


(3)日本ブース
 SIBF出展準備をしているころは、震災・原発事故の影響で、日本への外国人観光客が激減とか、ソウルでは雨が降ると学校を休みにしているとか、食品以外のものまで日本からの輸出品には放射線測定検査を行う国もあるなどのニュースを耳にし、SIBFで日本ブースが例年のように賑わい、来場者に躊躇なく本を手にしてもらえるのか、ずっと心配をしていた。ところが6月半ばでもう落ち着いた頃ということもあってか、行ってみたら例年と変わらぬ大人気で、大勢の人がブースを訪れ本を手に取り楽しんでくれていたので、胸をなでおろした。いらぬ心配だったようだ。
 しかし、震災前まで東京などに留学していたが、「東京は問題ないから大丈夫」といくら言っても韓国にいる親が心配をして、留学を中断あるいは断念させられソウルに戻ってきた、という人に会場で何人か出会った。やはり、子供が日本で生活を続けることにはかなり心配という親がほとんどらしい。


・図書
 今年も国際交流基金と出版文化国際交流会(以下PACE)共同で、入口に近くメインの通路に面した場所で構えた36・の日本ブース。例年のごとく、日本ブースは多くの人でごったがえした。外国からのブースでは断トツの集客数だ。特に20〜30代の女性、そして男子も含めて中高生も多い。


ごったがえす日本ブース
ごったがえす日本ブース


 日本から送った476冊の図書と、国際交流基金ソウル日本文化センター(以下JFセンター)が現地で用意したハングルの本129冊で構成。日本からの本のうち、美しい写真を多用して日本の様々なものを紹介するBooks on Japanは昨年大変好評だったため、他の国向けに比べたら少ないものの、今年は数を増やして展示した。和書はJFセンターとの協議で、韓国で人気の映画・ドラマの原作書、人気作家の新刊小説や話題作、日本で出版されている学術書からK-POPまで幅広く「韓国」をテーマとした本、というジャンルをSIBFだけの特別分野として今年は設定した。映画・ドラマ原作書では、『悪人』『告白』『のだめカンタービレ』『JIN』などがかなりの人気の様子。原作図書・コミックとあわせてオフィシャルガイド写真集も展示したら、多くの人がきゃあきゃあ言いながらページをめくっていた。新刊小説は江國香織、東野圭吾、吉田修一、恩田陸をはじめ韓国で特に人気がある作家のものから、日本でベストセラーになっている話題作などを用意。ともに、かなりの人が本を手にとって、友人同士あれこれコメントをしあっていた。


日本ブース図書
日本ブース図書


 日本語をそのまま読める人が多いSIBF向けには、その他人文や自然科学の分野でも日本語の文字だけの本を送ることができていい。他の国の図書展向けだとなかなかこうはいかない。
 逆に日本関連のハングル書ももちろん手に取り読みふける人が多い。これだけ毎回日本関連現地購入図書を充実して揃えられるのも、やはり韓国ならではだろう。今回ハングルの本を購入できないことを残念がる声が多かった。


・販売
 今年も教保文庫がブースでの販売を行った。日本から取り寄せる本はコストもかかるからかほぼ日本円の定価に近い販売価格で、ウォンにすると割安感はない。韓国の各ブースと違って、展示図書は割引販売という宣伝をしていないのにもかかわらず、販売可能な390冊のうち最終的に173冊が売れた。児童書やコミック、小説、手芸・料理などが主な売れ筋だが、しかし中には『理科年表 平成23年』など売れ筋ジャンルでないものがあっという間に購入されていったりと、当然のことながら個人の興味対象は様々だ。また教保文庫の在庫からは897冊が販売されたそうだ。


教保文庫による販売
教保文庫による販売


 一方アンケートのコメントでは「ネットではもっと安く買えるから、ここで買う必要はない」という声もあった。聞いてみると、大手書店ではあまり割引はしないとのことだが、韓国では発行後18ヶ月を過ぎると割引制限はなしになるため、新品の物が特にネット上では大幅な割引価格で買えるとのことだ。まったくの新刊でさえ10%を越える割引をしているサイトもあるし、ポイント制度で実質的に割引となったりするので、ますます多くの人がネットを利用しつつあるとのこと。どこも書店は苦しい立場に立たされているようだ。


・課題
 販売を行なった教保文庫の流通経路の問題から、英文図書と今回はハングル語図書も販売は不可と言われたが、来場者からの要望も多く、今後は販売実現できたらと思う。またアンケートによる来場者コメント「留学に関する本をもっと用意してほしい」「もっと新刊書を」「展示の分類をもっとしっかり」「日本の本と関係があるイベント実施を希望」など、できそうなものは次回早速対応したい。


・アテンダント
 今年のアテンダントは女性のソン・ヨンさんと男性イ・キョンフンさん。ソンさんは日本留学を終えて、就職活動中。日本語をすでに極めているが、韓国では英語と日本語だけでは不十分だからと、次の外国語を模索中だった。イさんは独学で日本語を習っており、まもなく兵役に行く予定とのこと。二人ともとても優秀で、来場者からの様々な問い合わせに応じ、準備も含めて6日間スムーズに事が進んだ。また二人とも日本語の学習にかなり熱心で、ブースでほんの少しでも余裕ができた時には、展示本をめくり、知らない単語が出てくると辞書ですぐ調べたり私に使い方を聞いたりと、その努力ぶりには頭が下がる。イさんは歴史好きで、歴史ドラマやコミックを見て日本語を習うこともあって、時々時代劇のような古い言い回しが出てきてこちらがびっくりしたり、神話時代の日本のことなどいろいろ聞かれて私をはじめ日本人が皆答えられなかったりと、我々にとってもいい刺激だった。個人的にもヨンちゃん、キョンちゃんと呼ばせてもらい、韓国のことも様々に教えてもらって、本当に楽しい出会いだった。


・国際交流基金作成の風呂敷、手ぬぐい
 国際交流基金による作成の風呂敷と手ぬぐいは最近各図書展に送られはじめている。これは外国でデザインを学ぶ学生に自国と日本の融合をテーマにしたデザインを公募し、受賞した作品のデザインを風呂敷と手ぬぐいにしたものだ。
 韓国の学生が受賞した作品「The Letters of Korea & Japan」(ひらがなとハングル文字を韓国伝統のパッチワークの中に散りばめたデザイン)をはじめ、二種類の風呂敷デザインを額に入れてカウンター前に立てかけた。すでに他国の図書展日本年の際に行われているように、最初はその風呂敷で包み方デモンストレーションをしたらどうかということだったが、韓国にも同じように布を使って包む文化があるとのことだったので、ここではそれはせず、代わりに土日にくじ引きを行い、当選者にプレゼントすることにした。
 あみだくじを作り、さらに結果が書かれた部分を覆うためのカードもアテンダントのソンさんが日本のコミックキャラを何十も手書きし、それがまたあまりに上手なので大変好評で皆に欲しがられた。そもそも集まってきた参加者の皆が皆、描かれたキャラクターの名前まできちんとよく知っていることに驚かされた。日本コミック・アニメの外国での存在感の大きさをあらためて認識する。


あみだくじとソンさん
あみだくじとソンさん


 まずJFセンター情報交流部文化情報チーム長チョン・ジュリさん、主任司書シン・ギョンミンさんがJF風呂敷プログラムについて説明。アテンダントのイさんが進行役をつとめ、絶えず笑いも取りながら非常にうまく聴衆をひきつけ、両日とも我も我もと大勢の人が群がり大盛況だった。風呂敷・手ぬぐい・JFセット・PACEから別の風呂敷の合計33人分が「当たり」で、はずれた人にもJFボールペンなどが渡され、参加者には喜んでいただけたようだ。


司会のイさんと風呂敷
司会のイさんと風呂敷


おわりに
 目上の方に対する時のしぐさや、徹底的にかきまぜて合わさった味のハーモニーを楽しむ料理など、まわりの様子を観察し、自分もまねしてみる余裕が出てきた今回のソウル行きだったが、近いから似ていると思いがちだが、違うことも多く、行く度におもしろさを実感する。
 共催の国際交流基金ソウル日本文化センター所長本田修さん、情報交流部長の十河俊輔さん、チョンさん、シンさん、前述の舘野さん、PACEのOBで韓国通の落合博康さん、アテンダントソンさん、イさんとともに今年もつくりあげ、無事終了することができた日本ブース。ソウルJF本部でご担当の皆様へも含めて、今回も心よりお礼を申し上げたい。


会場入口
会場入口


   
©PACE