一般社団法人 出版文化国際交流会 Publishers' Association for Cultural Exchange (PACE), Japan 本文へジャンプ


第64回フランクフルト・ブックフェア

報告:井土 純子(武蔵野美術大学出版局)



名  称
Frankfurt Book Fair
会  期
2012年10月10日(水)〜14日(日) 5日間
開場時間
9:00〜18:30 最終日は17:30まで
会  場
Messegelaende Frankfurt am Main
(フランクフルト国際見本市会場)
主 催 者
Ausstellungs- und Messe GmbH des Boersenvereins des Deutschen Buchhandels
(ドイツ出版社・書籍販売店協会)
テーマ国
ニュージーランド
参 加 国
100カ国以上(昨年は106カ国)
出展社数
7,300社(昨年は7,384社)
会場面積
171,790m2
日本ブース
36m2(インフォメーションセンターと日本共同ブース)
入場者数
281,753人(昨年は283,000人)
1日の入場料(*参照/通し券割引など数種類あり)
・トレードビジター 44ユーロ
・書店,司書    32ユーロ)
以下は土日のみ
・一般     1日券16ユーロ,週末券22ユーロ
・家族券    38ユーロ(大人2人,18歳未満の子ども3人)
・学生,退職者 10ユーロ

フランクフルト・ブックフェア概要

 出版文化国際交流会のサイトによると,2012年,国際ブックフェアは主要なものだけでも36ほどあり,おそらく全体では100を越える場所で開催されている。そのなかでもフランフルト・ブックフェア(以下, FBF)は,伝統・規模とも世界一のブックフェアだ。
 国際交流基金(以下,基金)と出版文化国際交流会(以下,PACE)の共催による日本ブースの運営する一員として,大学出版部協会メンバーである私が仰せつかった。
 FBFは世界100カ国以上,7,300社が出展。開催されるイベントは講演会,セミナー,出版関係者によるインタビュー,コンサートなど3,200以上もある。
 今年の入場者数は5日間で281,753人。東京国際ブックフェアの来場者数は4日間で74,616人(新文化7/9付)なので,その3倍以上の入場者数である。それでも前年に比べるとやや減少したが,版権ビジネスのための来場者は昨年より100社も多かった。
 オープニング・プレスカンファレンスでFBF総裁Juergen Boos氏が,「日々新たなプレイヤーがわたしたちの産業に参画し,日々新しい関係を創造し,新しい製品のアイディアやビジネスモデルを創出しています。これらの進展を出版産業界のビッグバンの瞬間と呼ぶほうがふさわしいかもしれませんと語っていた。この経済状況だからこそ出版業界をはじめメディア界の動向についてマーケティングを活発に行い,ビジネスのアイディアを求める人が多かったということではないだろうか。

 

01

 

フェア前日
 フェア前日の10月9日(火)に現地到着。東京ではまだ半袖で出歩けるほどだったが,フランクフルトの空気は澄んでいたからだろうか,ずいぶん肌寒かった。FBF経験者の方からの助言にしたがって厚めのコートにして大正解だ。
 数日前に現地に到着していたPACE事務局の佐藤佳苗次長は,開始に向けさまざまな準備と対応に追われていた。フェア前日の朝,すでに搬入されているはずの書籍がフランクフルト国際空港の税関で一時的にストップされたという。数カ月前に,日本から運ばれたバイオリンの名器に1億円以上の関税を要求されたニュースがあり「州債務危機の影響もあり税収増のため課税検査が強化されている」(日本経済新聞10/10付)と報じられていた。この期に及んで,ブックフェアの書籍にVAT(付加価値税)が強化されてしまったのである。結局はその税金の支払いに応じ,書籍が搬入され,夕方のギリギリに設営が終わったとのことであった。

 

日本会場・日本ブースについて

 

02

 

 FBFは,フランクフルト国際見本市会場の12の建物のうち8つの建物を使用している。端から端まで歩くと30分はかかりそうだ。会場内で往き来する見本市専用の小型バスをよく見かけた。
 日本で用意してもらった出展者パスは,開催2日前から終了翌日まで,フランクフルト市内・近郊での鉄道,バスなどの公共輸送機関の運賃が含まれている便利なパスだ。この利用可能期間について,以前はフェア終了日までと期間が短かったそうだが,ブックフェア出展者の要望によって改善されたとのことである。
 アジア,一部のヨーロッパなど国際的な出版社が集まっている6号館のフロアに日本ブースと日本の出版社が集まった日本会場がある。SバーンMesse駅から徒歩3分,入り口真正面で非常に便利な場所だ。このような好待遇の場所でブースを持てるのは, PACEが52年間出展し続けている信頼と実績があるからとのことである。
 日本会場の一番目立つ場所に,「JAPAN」と書かれた立体の電光看板が見える。その下に基金とPACE共催の日本ブースがある。
 日本ブースは,インフォメーション・センターと日本共同ブースからなる「日本の総合的な情報センター」だ。
 アテンドするのは,佐藤次長,基金のケルン日本文化会館の高羽洋充副事務局長,日本文学出版交流センターの舘野純子プロジェクト・ディレクター・理事,ダルムシュタット工科大学生の那須拓海さんと私の計5名。昨年のFBFは,佐藤次長と現地アテンダントのおふたりだけだったそうで,今回は人員には恵まれていた。


03

[インフォメーション・センター]

 

 インフォメーション・センターは16m2の広さ。お客様を迎える受付には,毎年,いけばなインターナショナル・フランクフルト支部の協力で,いけばなを飾っていた。今年は赤と橙色のストレリチア(極楽鳥花)が鮮やかに凛々しく生けられおり,大勢の人の目を楽しませていた。そのほか日本会場で単独で出展している出展社ブースのすべての受付にいけばなが飾られ,日本会場らしい統一感があった。

 

04

[いけばな]

 

05

[日本共同ブース]

 

 日本共同ブースには大学出版部協会,出版梓会,自然科学書協会の3団体と岩波書店,文藝春秋,鹿島国際著作権事務所,今年初参加のハースト婦人画報社の4社。4社には,商談用テーブルも用意された。
 日本共同ブースは20m2の広さ。昨年より4m2広くなり,そのため展示本をゆっくりと閲覧できるスペースが増えた。今年はじめて,このブースとインフォメーション・センターの通路をはさんで分けたそうだが,この通路をはさむことで空間に余裕ができ,日本ブース全体を広く感じることができた。しかし通行人が多くなると向かいの様子がわからなくなり,展示コーナーに死角ができた。気づくと展示書籍がなくなっていることがあり,注意が必要となった。

 

展示書籍について
 日本ブースの展示書籍の総数は493点。基金発行のJapanese Book Newsに掲載された書籍のほか,基金購入の文学作品,日本語テキスト,人文書,芸術・文化に関する写真集,児童書,震災関連本,料理・手芸などの趣味実用書,雑誌,辞書,コミック,画集,日本文学出版プロジェクトの日本文学書などの和文図書180点,英文図書169点,ドイツ語図書14点。大学出版部協会からは23出版部が参加し,41点を出品(うち小局は2点),出版梓会より24社47点,自然科学書協会より22社42点の専門書を展示した。
 団体展示品の多くが和文図書であるため,PACEの新藤雅章事務局長が英文の説明書きを作成され,各書籍にはさんで展示した。大学出版部協会の一員として毎年書籍をFBFに送っていたものの,このような細かい配慮がされていることは知らず,そのお心遣いに改めて感謝した。今後,紹介文を本の帯にする,POPにするなど,より良い活用法で紹介できればと思った。これら展示した書籍はブックフェア終了後,サンクトペテルブルクのロシア科学アカデミー附属図書館「三笠宮文庫」へ寄贈される。
 基金で購入した図書は,ヴィジュアル本をメインにして面陳(表紙をみせて陳列)した。コミックから学術書まで幅広い分野からの選書は大変素晴らしく,この機会に1冊でも多くの書籍により日本文化を知ってもらいたいという気持ちが伝わってくる。しかし,展示面積に比べ書籍の量が多く,書籍の表紙が重なるように陳列されたため,下の本が見えない。また下になっている本は取りにくく,取り出したあとも棚が乱れてしまった。分野ごとの陳列にし,そのなかでメインのものは目立たせ,そうではないものは棚差し(背表紙だけを見せる方法)など,書籍の見せ方にもう少し工夫が必要ではないだろうかと思った。
 毎年,書籍購入の問い合わせが多いというが,今年も購入の要望が多数寄せられた。しかし販売するためには,FBF主催者側との決まりで「最終日のみ販売」「定価販売」「領収書を出す」等があり, 現状でこれをクリアすることは難しいため今年も実現できなかった。

 

06

[大学出版部協会,出版梓会,自然科学書協会の棚]

 

単独出展社のブース
 日本の出展社は34社5団体が参加した。日本会場で単独で出展している出展社ブースのうち,オーム社,学研マーケティング,講談社,小学館,大日本印刷,ディスカバー21,日本著作権輸出センター,リードエグジビションジャパンの8社をPACEが出展についてとりまとめていた。また,6号館にはほかにもイングリッシュ・エージェンシー,アサノ・エージェンシー,タトル・モリ・エージェンシー,トーハン,日本ユニ・エージェンシー,WARNEY COMPANY,3号館ではグラフィック社,至光社,ドイツセンター。4号館は医学書院,紀伊國屋書店,南江堂,培風館,ピエ・ブックス,ビー・エヌ・エヌ新社,丸善,メディカル・サイエンスインターナショナル,Veronica Schaepers。8号館に講談社(ヨーロッパ),国連大学出版部,凸版印刷(アメリカ),Tuttle Publishingなどが出展。

 

07 08

[左から講談社と小学館のブース]

 

09 10

[左から大日本印刷, 学研マーケティング,オーム社とディスカバー21のブース]

 

ビジネスデーの3日間
 最初の3日間はビジネスデーだ。ブースを訪れる世界各国の出版,書店,図書館関係者,翻訳権エージェント,著訳者などに対する出展書籍の案内とプロモーション,翻訳権の仲介,情報提供が私の仕事となる。1日目は開場とともに人が押し寄せたものの,2日目は雨のためか人がやや少なかった。ビジネスデー最後の12日は人が戻り,各所で活発に商談がおこなわれていた。
 インフォメーション・センターにいると,各ブースの場所の問い合わせが多い。短い期間で商談をより多くこなすためには巨大な会場を効率よくまわらなくてはならない。PACEが用意した日本の出展社ブースの地図がとても便利であった。
 昨年の佐藤次長の報告にもあったが,視覚にうったえるヴィジュアル本の人気は高く,そうした本を多数扱うタトル出版へ向かう人が,昨年に引き続きとても多かった。

 

 日本ブースで問い合わせの多かった内容は以下のとおり。

  • 出版社の連絡先
  • 翻訳出版の希望と売込み
  • 著訳者による自作の売り込み(小説,ノンフィクション,研究本,実用書,ヨガ,自己啓発本など)
  • 本の問い合わせ(学術書について,英語で書かれた本はあるか? 電子書籍はあるか? など)
  • 印刷会社の売りこみ
  • 翻訳・助成金について
  • インターンシップについて(子どもが日本語を勉強しながら,働きたいという希望を持っているが,日本の出版社で受け入れているところはないか?)
  • 携帯アプリで人気のモバイルゲームキャラの売り込み

 問い合わせの多かった出版分野は以下の5分野であった。
  1. 美術書(画集,写真集,芸妓やいけばななど日本文化関連のもの)
  2. 日本地図,観光本
  3. 工学書
  4. 自然科学(オールジャンル)
  5. 実用書(料理,手芸)

 具体的な出版社名や作品名,著者を尋ねる人は少ない。「自然科学書をだしている出版社はどこか?」「工学系の本を出したい」など,大まかな問い合わせがほとんどで,商談先の情報を集めていたようだ。そのような場合,日本共同ブースや参加している出版社をはじめ,PACEで用意してもらった日本の出版社リストから出版社のコンタクト先を紹介した。書籍に関しても出展リストを元に紹介したが,アナログな作業で少々手間取ってしまった。今後,来場者自身が検索できる方法,もしくはパソコンの導入を考えてもよいかも知れない。

 

一般デーの土・日
 週末の土曜・日曜日は一般開放日で,ビジネスデーの3日間とは雰囲気がずいぶん異なる。
来場者は「日本に留学していた
「日本を旅行して気にいった
など,日本に好意的な人が多い。
 美術や音楽,浮世絵などの芸術,いけばな,刀,料理,建築についてなどの日本文化についての本がとても人気であった。また震災・原発関係のコーナーの前で立ち止まり,長い間, 書籍を読んでいる人の姿も多く見かけた。
 一般デーではコスプレをしてくると入場料が半額や無料になる。そのため,日本のコミックやアニメのキャラクターを模して,若者たちが思い思いの格好でやってくる。写真撮影にもポーズを交え気楽に応じてくれる。日本語を話したい方が多いので,日本語で話しかけると喜んでもらえた。
 別会場のCongress Centerで行われたコスプレ・ドイツ大会では,大勢のコスプレイヤーたちでいっぱいだ。その人たちを見ていると,ここはドイツではなく,違う惑星にいるのではないかと思えてくる。会場ではコミックやフィギュアやコスプレ衣装,人気作品のカードなど,さまざまな商品が販売され,大盛況の様子だった。

 

11 12

[左から日本語テキストとコミック]

 

13 14

[日本のポップカルチャーに詳しい人たち]

 

日本書籍の需要と購入方法
 また一般デーでは書籍を購入したいという来場者が増えた。
 ドイツ駐在の主婦はドイツ人へのプレゼントとして,日本文化についての本を。カールスルーエの日本語学校で教師をして1年になる女性はテキストとして絵本を。フランクフルト大学で日本学を学ぶ日本人留学生は,ゲーテの原著を読む一方,自分の解釈があっているのか確認のために日本語訳の書籍が欲しいとのことだった。
 ドイツでの日本書籍の購入方法を聞いてみると「最近は購入しない」と悲しい返事であった。なぜならば,入手手段が難しく,また日本で買うより高額のため,躊躇するのだという。それでも必要な場合は,ドイツで日本の書籍を専門的に販売している書店やオンラインショップを利用する。またフランクフルト大学の学生達は日本書籍が豊富に収蔵されている大学図書館で調べたりするという。
 購入希望の分野は,実用書(料理,手芸),雑誌(ファッション,ゴスロリ,ヴィジュアル系バンドなど),日本語テキストが多かった。コミックについては,コスプレ会場はもちろん,専門ブースや国内でも多数の販売店があるため,インフォメーション・センターでは,問い合わせをほとんど受けなかった。

 

現地書店への訪問
 フランクフルトで日本の書籍を専門に扱っているOCS JAPAN STORE(以下,OCS)という書店がある。昨年,このOCSの協力で,来場者への購入ルートを設けることができた。今年も佐藤次長が,その打ち合わせのためにOCSを訪問するというので,その役を私が申し出た。フランクフルトで日本の書籍が販売されているところを実際に見てみたいと思ったからだ。
 OCSはデュッセルドルフとフランクフルトに店舗を持つ。今回,訪れたフランクフルト店は,20年以上前から店を構えている。ウィンドウに書籍が並んでいるが,店のなかの半分のスペースは日本の食料品,日用雑貨で占められている。ここ5〜6年は書籍のみならず,日本食,雑貨を扱うようになり,来店者の半数は食料品が目的だという。しかし,昨年は食料品の輸入について放射能検査に関する規制がとても厳しくなり,販売にも影響が出たそうだ。
 OCS店員の浜本和恵さんにお話を伺った。ほかに従業員は1,忙しいときにはアルバイトも入れるという。奥に入ると,書籍の棚が4つ程ならび,ウィンドウ側と合わせると全部で3,000〜4,000冊の在庫があるとのことだ。取り扱いジャンルは,文芸,文庫,新書,辞書,医学,教育,児童書,語学,料理,手芸,旅行,ファッション誌,歌手やアイドルなどのカルチャー誌,コミック,コミック雑誌,またドイツでの暮らしに便利な専門誌がある。
 仕入はトーハン海外事業部を介しているので,注文してから1〜2週間で届く。しかし基本的に買い取り商品になるため,どうしても在庫を控えなくてはならない。輸送,手数料などのコストを含めると,販売価格は日本の2倍以上であった。
 客層は,邦人駐在員のほか,3分の1ぐらいをドイツ人が占める。邦人に需要が高いのは,文芸書,地図,雑誌で,ドイツ人に人気なのはアニメ,いま流行しているゴスロリなどの雑誌,絵本,児童書など。リーマンショック以降,邦人駐在員がかなり減り,かつては美術書や画集が良く売れたのだが高額のためか,いまはそんなに売れない。近くにフランクフルト大学や日本語補習授業校があるので,日本文化についての本や専門書の問い合わせはあるが,例えば文芸書は,単行本でなく文庫の仕入に変わったなど,予算も減ってきているとのことだ。
 日本ブースで配る注文書をもらおうとしたが,「今年は店舗の案内チラシのみにしてください」と言われた。昨年5,6件の購入希望があったが,価格の折り合いがつかず,購入に結び付かず手間ばかりかかったという。日本書籍の販売の難しさを知ることになった。
 ドイツでの日本書籍の需要は確かに高まっている。だが残念ながらいまのところそれに応える有効な手段がない。電子書籍の普及がこのニーズを満たしてくれるのだろうか。それとも印刷本を世界に流通させる方法がほかにあるのだろうか。いずれにせよ,はじめて目の当たりにするこのマーケットの実情を出版人としてつよく意識した。

 

15 16

[OCSの外観と店内の様子]

 

国際交流基金のデモンストレーションとアンケート
 基金のケルン日本文化会館・高羽副事務局長は,開催の5日間,ヨーロッパの高速列車 ICEで2時間かけて,ケルンからフランクフルトまで通われていた。お話を伺うと日本のポップカルチャーの影響から,日本語を習得したいという若者が増えており,日本語学校が大人気だという。日本ブースでは,基金と日本国際教育支援協会による「日本語能力試験」への関心がとても高く,試験や受験に役立つテキストの問い合わせが多くあり,用意されたチラシのほとんどがなくなってしまった。一般デーには,日本語を楽しく学べるe-ラーニングサイト『アニメ・マンガの日本語』のデモンストレーションが行われた。入れ替わり立ち替わり試す若者でその人気ぶりを実感した。
 高羽副事務局長によれば,基金の用意した日本ブースに関するアンケート100枚を配付し,82枚の回答があったとのこと。日本ブースの展示書籍のバラエティ,ブースレイアウト,案内について,9割の方が満足してくれたとのことだ。興味を持った書籍分野については,コミック・アニメと芸術が同数で多く,美術系出版社として喜ばしいことだった。
 記入してくれた方へお礼として,日本から持ってきた飴や新聞紙で折ったカブト,基金よりボールペンや折り紙セットをプレゼントし大変喜ばれた。 

 

17
[デモンストレーションの様子]

 

18
[日本の新聞で作ったカブトをプレゼント]

 

日本文学出版交流センターの “Books from Japan”
 日本文学出版交流センターのWEBサイト,“Books from Japan”は日本の書籍を世界に発信するためにあるサイトで,出版社が海外へライツセールスをする際に非常に便利なツールになる。FBFに合わせ特設ページを公開しており,小局の書籍も英語で紹介していただいた。センターの舘野プロジェクト・ディレクター・理事は,来場者に対し端末機器を使いながら作品や作家を案内し,商談で活用されていた。“Books from Japan”の WEBサイト・アドレスを掲載した紙製の“しおり”は,小局のオリジナル“しおり”とともに来場者にとても人気があった。

 

19
[人気のしおり!]

 

情報発信の必要性
 基金とPACE共同発行によるPractical Guide to Publishing in Japanは日本の出版界の概要や,商取引につながる基本情報や助成基金など,必要な情報をコンパクトにまとめたものだ。日本書籍出版協会発行のAn Introduction to Publishing in Japanも,日本の出版動向がわかる1冊であり,日本ブースに寄られる方にお渡しすると大変喜ばれた。アテンドした私たちにとっても,この2つは大変重宝したカタログであった。
 そのほかにも,基金発行のJapanese Book News,小局はじめ出展社,自然科学書協会のカタログ,美術書出版会のパンフレット,大学出版部協会・国際部会で準備した「大学出版部協会 at FBF」「日本に関するおすすめの本」のパンフレットを配布した。
 FBFのブースにいると,連日多くの人からの問い合わせを受ける。情報提供のため,紙の媒体資料は必要不可欠であり,また,これからはWEBの利用もますます必要になるだろう。そして,英語で書かれていることはいうまでもないが,実用的であること,分野毎の紹介,多言語社会に訴えるヴィジュアルの美しさなどが,なによりも重要だと実感した。
 大学出版部協会では,2013年に迎える設立50周年記念事業として, 英文目録の発行と英文WEBサイトの開設を準備している。国際社会に日本の大学出版活動と刊行物を広めるという目的からである。 今回,日本の学術出版物の情報を所望されている方に直接お会いすることができた。例えば,アメリカのNew York University Press, University of Washington Press,カナダのWilfrid Laurier University Press などの大学出版部,ドイツで最大手のテキストを発行している出版社のSpringer社。上述のOCSやスイスの書店,アジアンミュージアムのライブラリアンと情報交換をしあうことを約束できたことは,大きな収穫である。

 

諸外国のブース
 日本会場の隣のベルギーは,白を基調にブルーが爽やかなブースであった。その先のフランスは黒を基調としたシックなブース。どれもお国柄のイメージを生かした素敵な装飾だ。
 同じアジアの中国,韓国,台湾などは,どれも白を基調とした清潔なイメージで商談ブースを広く設けながらも余裕のあるブースだった。天井や梁を付けて空間演出もきちんとされ統一感がでていた。中国,韓国,台湾は国からの文化的支援が厚く,装飾などに予算をかけられるとのことだ。
 日本会場の単独出展社ブースは, 各出版社が自由なレイアウト,装飾をしている。そのためそれぞれの社の特徴がよく出ている反面,どうしても統一感が薄れるのは否めない。日本のレイアウト装飾に対する不満がでていたようだが,ほかの国際ブックフェアにべ,FBFの出展料,装飾費用などは高額とのことで,従来と同じ予算でこれ以上の装飾はとても難しいとのことだった。

 

20 21
[左からフランス,ベルギーブース]

 

22 23
[左からイラン,アイスランドブース]

 

24 25 26
[左から中国,韓国,台湾ブース]

 

海外の大学出版部のブース
 世界中から大学出版部が出展しているが,中でもCambridge University Pressが一番目立っていた。8号館にあった巨大なブースには,ほとんど書籍は見あたらず,電子書籍の紹介のためのコンピュータが数台置かれているだけであった。世界規模でのマーケットで活動するためには,電子書籍化が大きな課題であると実感した。
 Eurospan Groupが取り扱う大学出版部は,40社以上もあるようだ。このブースでは「新刊」「教育」「人文書」「アジア版」など種類の豊富なA4サイズのカタログが置かれていた。世界各国から参集した大学出版部のブースを目にしたが,とくにYale University Pressは画集や写真集,建築やファッションなど,大型本や装丁の凝った美しい本が多く,人気のあるブースであった。

 

27 28
[左からCambridge University PressとCombined Academic Publishers]

 

個性的なブース!
 ドイツでは書籍を耳で聞く「オーディオブック」が盛んであるらしく,オーディオブック専門のブースが設けられていた。6号館のグランドフロアでは,アンティーク・ブックフェアが開催されていた。なかに足を踏み入れると,中世の聖書,大型の美術書,ビーズで装飾された書籍,ヘミングウェイなどの手紙などが美術骨董品として取引されており,まるで美術館のなかにいるようであった。美術系の出版社が集まる会場はデザイン,写真集などのそれぞれ特色のあるブースが色鮮やかに並んでいた。17時をすぎると多くのブースが徐々に騒がしくなる。ハッピーアワーだ。ベルリンのGestaltenというデザイン書を出版している出版社の前を通りかかると,「どうぞ!」とワインやパンを振る舞われ,つい足をとめてワインを一口ご馳走になった。

 

29 30
[左からオーディオブックブースとアンティーク・ブックフェア会場]

 

ブック・アート・インターナショナル
 FBFでは,ライプチヒブックフェアで公開される「世界で最も美しい本コンクール
の入選図書や,日本の造本装幀コンクールで入賞した世界各国の美しい本が飾られている。ここは出版関係者なら誰もが喜ぶスペースだ。
 応募された31カ国,540冊の本から,世界で最も美しい本2012−−金の活字賞に選ばれたのは,デンマークのLa R?sidenceだ。薄みどりのクロス装にゴールドの筆記体が大胆ながら,シンプルで美しい装幀の写真集が華々しく飾られていた。
 7月に東京で開催された造本装幀コンクールで入賞した22作品が展示。最優秀賞にあたる文部科学大臣賞を受賞した『蒸気機関車讃歌−−白い息遣い』(クレオ刊)の著者で写真家の山岸起一郎先生ご夫妻が来場されていた。とても晴れやかなお顔が印象的であった。
 出版文化国際交流会賞の『空海からのおくりもの−−高野山の書庫の扉をひらく』(凸版印刷・印刷博物館刊)や, 日本印刷産業連合会会長賞の『古語大鑑』(東京大学出版会刊)などがあったが,今年に限って小局の本がなかったことが残念であった。

 

31 32
[左からブック・アート・インターナショナルの会場と金の活字賞の本]

 

テーマ国・ニュージーランド
 今年のテーマ国はニュージーランドであった。フォーラム館で開催されているニュージーランドのメイン会場は,ガラス張りの巨大な建物だ。この建物のすべてがニュージーランド館となり,まるで万博パビリオンのようだった。

 

33
[ニュージーランド館外観]

 

 今回のニュージーランド館のテーマは“ WHILE YOU WERE SLEEPING”,直訳すると「あなたが寝ている間に」である。最終日とあって人が多く15分ほど並んでやっとなかへ。会場内は真っ暗で,鳥や虫の声,時折聞こえるのは獣の声のようだ。天井にはまるく大きなお月様が浮かび,たくさんの星が散らばっている。床には水が浅く引かれていて,黒く静かな水面に空の月と星が映りこみ,自分がニュージーランドの大自然の夜にいるような神秘的な空間であった。
 会場中心には巨大な立体スクリーンに本棚が投影されており,しばらくすると映像が流れはじめた。それは生命の誕生から現在までを描いた映像のインスタレーションであった。ニュージーランドの現代をみつめつつ,太古の記憶を呼びさますような内容だった。
 会場のいたるところに,小さな三角の屋根をかけた室内が造られ,ニュージーランドの豊かな自然や歴史,文化,観光,地図など,あらゆる書籍がその天井から吊されていた。入場者は好きなものを選んで会場内のどこでも閲覧できるようになっているのだ。さらにその奥に進むと,イベント用の舞台があり,マオリ族のホラ貝と歌声を合図に,ニュージーランドの作家によるトークショーが行われていた。ニュージーランドの魅力に溢れる会場であった。

 

34 35
[ニュージーランド館内]

 

最終日・フランクフルトの7日間
 終了と同時に,もっと何かすべきことがあったのではと私は不安になった。自分が専門家としてお役にたてたのだろうか。甚だ不安であったが,佐藤次長から来場者とコミュニケーションをとるために積極的に動いたことを評価いただき,全ての疲れが吹き飛んでいった。会場を後にし,日本ブースのスタッフと食事へ。みんなはドイツ料理に食傷気味のところ,私のわがままなリクエストに応じていただき,フランクフルト郷土料理を堪能しながら,お互いの労をねぎらった。そして,これからのFBFにおける日本ブースの可能性などについて夜遅くまで語りあったこの日は,出版人として忘れられない夜となった。日本にいては決して経験することのできない7日間を経て,私は「まだまだ私たち日本の出版界にはやるべきことがあるはずだ」と確信したのである。
 こうした機会を与えてくださいましたPACEの横手多仁男専務理事,新藤雅章事務局長,佐藤佳苗次長に厚く御礼申し上げます。日本での周到な準備をはじめ,現地でのご配慮には学ぶことばかりでした。佐藤様の来場者への丁寧な応対や出展者の方へのお気遣いは本当に勉強になりました。
 国際交流基金の高羽洋充様,日本文学出版交流センターの舘野純子様,すばらしいアテンドをしてくださった学生の那須拓海さん。会場でお会いし,お世話になりました皆様に心より御礼を申し上げます。
 最後になりましたが,ご推薦くださいました大学出版部協会の山口雅己理事長に心からの感謝をささげます。どうもありがとうございました。

 

   
©PACE