一般社団法人 出版文化国際交流会 Publishers' Association for Cultural Exchange (PACE), Japan 本文へジャンプ


第67回フランクフルト・ブックフェア研修視察参加にあたって


報告:坂本 美香・竹内 映子(昭和図書株式会社)



2015 FBF視察団

 

 2015年10月16日、私たち一行8名は昼、成田を出発し同日夕方フランクフルトに到着。そのまま宿泊先のホテルがあるマインツの町までバスで移動。車窓からは見渡す限りの広大な平野を臨むことができた。到着したホテルはライン川のほとりに建ついかにもヨーロッパらしい瀟洒な感じであった。到着が夜となったせいもあり、夕食を早々と済ませベッドに入るが時差のせいか、寒さのせいか、あまり寝つけないまま朝を迎えた。
 今朝はいよいよブックフェア。今にも雨が降りだしそうなどんよりとした天候。フランクフルトのメッセ会場には、土曜日のせいか渋滞もなくホテルから30分程度で到着した。まず、全員で日本のブースが集まっている4号館に向い、出版文化国際交流会の横手専務理事にご挨拶をし、会場の大まかな説明を受けた後自由視察となった。世界最大の書籍の見本市というだけあって、世界中の出版社が一同に集い版権等の売買を行うというのだから、とにかく広い。今年より規模を縮小した旨の説明も受けたが、では昨年まではどれだけのスペースだったのかと想像を絶する。帰りの際の集合場所を決められたが、ここに果たして無事戻って来ることができるのか不安に思うほどだった。
 あまり一気に遠くの建物へ移動するのは迷子になりそうで勇気が必要だったので、近くの日本の出版社のブースより見学。同じフロアにはアジアの出版社が軒を並べるが、他の国と比較するといずれの日本の出版社のブースも寂しい。ブースの面積も出展書籍も少ない。アジアをリードしてきた日本なのだから、なぜもっと文化面で積極的に外交をしようとしないのか不思議だった。そんな中で中国系出版社のブースの規模が大きく存在感を示していた。国を挙げて乗り込んできているようにさえ思えた。日本のブースの存在感の薄さとは好対照であった。
 そして今年のテーマ国である『インドネシア』。おそらく自国の出版市場規模は小さいであろうが、世界を相手に版権等の取引をしょうという意気込みが感じられる。セミナーを開催し自国のアピールをしていた様子が印象的であった。
 また、ブックフェアは別の側面を持っているように感じたのがコミックのブース。コスプレをした人たちで溢れており、これだけを見ると書籍の見本市というよりさながら世界の巨大文化祭のようでもある。マンガに疎い私たちは何のコスプレだかは全くわからなかったが、ただのマネではなく、コスプレの中にも自分たちの個性を出しているように見え、一種のアートの世界になっているのだと理解した。
 とても全てを回り切ることは到底できなかったが、どこの国のブースを歩いていても感じたのは、ここにあるたくさんの素晴らしい絵本や書籍が1冊でも多く世界の子どもたちに届けられればよいということであった。
 夕方メッセ会場を後にし、文豪ゲーテの生家を訪ねる。現地アシスタントガイドの矢野さんの舞台女優さながら、情熱のこもった説明を受ける。多感な少年時代を過ごした家であり、当時、フランクフルト屈指の名家だったためとても立派な家である。調度品は第二次世界大戦中、疎開していたためそのままが残されているという。いずれも素晴らしいものだった。
 翌日は活版印刷の発明をしたグーテンブルグの博物館を見学。私たちが宿泊した町マインツの出身であり、ホテルから徒歩で行くことができた。その途中マインツの市街も見学したが、当日は日曜日ということでお店は全てお休み。礼拝の日ということらしい。ドイツ人の休み方の徹底ぶりを垣間見た気がした。日本人には絶対に真似できないだろう。市街を歩いていると日曜のせいか人通りも少なく、足許は石畳でどこからともなく教会の鐘の音が響いてきて、ヨーロッパの風を少しだけ感じることができた。
 ドイツに来て初めて顔を出した沈みかけの太陽に見送られながら、夕方空路イタリアローマに向かう。ローマの街並みは古く、いたる所が世界遺産のためなのか近代的なイメージはない。そもそもイタリアの訪れたいずれの街も、古き良きものを守ろうとした結果ではなく、たまたま古くなったけどなんか雰囲気いいからこのままにしておこうという感があった。
 翌日はバチカン市国、ローマ市内を見学。バチカン市国,これはもう本物を見た者だけがそのすごさを体で感じるもので言葉にできるものではない。終始圧倒されっぱなしであった。午後は市内の名だたる名所を見学して回ったが、どこも修復工事中のところばかりで今ひとつ感動に足りなかった。その後、市内の書店視察では、店の採光の取り方がイタリアらしく明るく、その上カラフルでクリエイティブな色使いの書籍や絵本を数多く見かけ、さすがイタリア!と思った。ドイツ滞在中、フランクフルトの書店も1軒覗いてみたが、金融経済の中心地の書店ということもあってか派手な装飾や色使いはなく、イタリアとはかなり感じが違っていた。ただどちらも、店頭にディスカウントされた書籍が堂々と並んでいる姿が見受けられ日本との文化の違いに少々驚いた。
 ローマを後にし、ナポリ郊外のポンペイ遺跡を訪ねる。古代ローマの都市と人々の生活ぶりをほぼ完全な姿で今に伝える貴重な遺跡。発掘されたポンペイの街は整然と区画され、住民たちはもちろん、劇場、公衆浴場、下水道まで完備され、人口1万人以上と推測される町には壁画、モザイク画、市民が記した落書き等が当時のまま残され、古代ローマの市民たちの贅沢で享楽的な暮らしぶりを鮮明に物語っているように感じた。
 ナポリからフィレンツェへ、今回初の列車移動。『世界の車窓から』的な気分を少し味わえ、にわかヨーロッパ人になったかの気分。でも、外国の方たちはトレーにサンドイッチを乗せおしゃれに食べていたが、私たち一行はビールにピーナッツといったように純日本人?を貫いた。
 フィレンツェ到着後、ピサの斜塔を見学。斜塔内にはカメラ等以外の持込は不可のため貴重品は全てポケットに入れた。しかし斜塔に入るときにそれは厳しいセキュリティーチェックがあり、ポケットの中身も全部出させられた。やっと入口にたどりつくと入口もびっくりするほど斜めになっている。嫌な予感を感じながら入ると、既に体が斜めに傾いている。階段は予想以上の狭さで螺旋状になっており、全ての階段297段を上り切ったときにはもうヘロヘロ。船酔い状態となっていたため、素晴らしい上からの景観を眺める余裕もなく地上へ降りることとなった。ピサの斜塔といえばお決まりのポーズ、斜塔を倒したり、支えたりするポーズで撮影しているが、これがなかなかうまく撮れない。みんなけっこう悪戦苦闘していた。
 翌日はウフィッツィ美術館を見学。ルネッサンスを代表する画家ボッティチェッリの作品を数多く所蔵する美術館だが、とにかくすごい!の一言。日本でも昨年ウフィッツィ美術館展が開かれていたが大混雑していた。バチカン美術館といいウフィッツィ美術館といい、この本物をいつでも見ることのできるイタリア人はなんて幸せなのか。凡人の私たちがこれらの美術館を語るなどということがいかにおこがましいことかと思う。
 そんなウフィッツィ美術館を名残惜しみながらヴェネツィアに向かう。ところが出発し数十分というところで事故渋滞。1時間位であったろうか全く動かず・・・。夕方の書店視察に間に合わない可能性が出てきたため、明日の自由視察の時間に振替えようかと添乗員の山崎さんがどこかへ連絡している声が聞こえてきた。明日の自由視察の時間は晴れて自由の身になれると色々計画を立てていた私たちは目を見合わせ、早く動いてくれ!と祈る気持ちでいた。その気持ちが通じたのか、急に渋滞が解消し、書店視察も何とか間に合うだろうということになりちょっとホッとした。そしてヴェネツィアにやっと到着。
 私たちの宿泊するホテルは本島にあり、船で渡るとのこと。船に弱い私たちはまたもここで嫌な予感が的中。バスから降りると桟橋に浮かんでいるのはモーターボートに屋根をつけただけの船。早くも私たちのスーツケースが積み込まれている。「まさかあのモーターボートみたいな奴?」「あれは荷物だけじゃない?」「私たちが乗るのはもっと大きい船・・・」と数人で話をしているうちに先に桟橋に到着していた男性陣がその船に乗り、私たちを手招きしている。「うそ・・・」「ムリ・・・」あんな小さい船で30分も・・・ 昨日ピサで味わったよりもっと強烈な船酔いとなるのは目に見えている。でも仕方ない・・・ 覚悟を決めて乗り込んだがやはり揺れる。長い、長い30分であった。しかし男性陣の子どもに返ったかのようなはしゃぎぶりに少し気が紛れた。ありがとう・・・
 船酔いでヘロヘロなままホテルにチェックイン後、時間が押していたため休む間もなく書店視察へ向かった。3軒視察の予定だったが、やはり時間が遅く1軒は閉まっていたため2軒のみの視察となった。1軒目の書店は本当に小さく置いてある点数もわずかであったが整然と並べられ、とてもお堅い書店の雰囲気がした。日本でいえば専門書ばかりを扱っている書店のようであり、店主の方もイタリア人の陽気さを持ち合わせていたが、とても本に対して真摯に向き合っている姿が感じ取れ、日本人に近い感覚がした。2軒目の書店・・・ここはもう1軒目とは好対照。もう驚きの一言。本を扱う商売なのに、愛着とかそんなものは感じられない。商品である本が乱雑に置かれ、その上にネコは乗るわ、ネコの餌も置いてあるわで・・・ ってことはまさかネコのトイレも本の上??と私たちは疑ってしまった。店の裏は運河が流れており、本が浸水しかかっているようにも見えた。これはイタリア人のおおらかさではなく、店主の方針?というよりこれを名物に集客を図っているとしか思えない。1軒目の真面目な書店よりも売場面積も広く、けっこう遅い時間に訪ねたにも係わらず、お客さんの入りも悪くなかった。日本もそうだが、書店といってもただ品揃えがよいだけでは集客できない時代となってしまったのだろうか。本に携わる仕事をしている私たちとしてはちょっと寂しい気がした。
 こうして私たち一行は翌日の自由視察をそれぞれに終え、また帰りの船で当然のごとく四苦八苦しながらもヴェネツィアを後にし、パリ経由で羽田に到着した。
 10日間という長丁場で出発前は不安もあったが、よき仲間とめぐり逢え、また行く先々でついてくださった現地のアシスタントガイドの方々、そして日本から一緒に添乗してくださった山崎さんの行き届いたご配慮があったからこそ、あっという間の10日間の視察を無事終えることができたと思う。この場をお借りしてお礼を申し上げます。皆さん本当にありがとうございました。この貴重な体験は私たちの一生の宝となるでしょう。

   
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