一般社団法人 出版文化国際交流会 Publishers' Association for Cultural Exchange (PACE), Japan 本文へジャンプ


第24回ソウル国際図書展


報告:佐藤 佳苗(出版文化国際交流会)



名  称
Seoul International Book Fair
会  期
2018 年 6 月 20 日(水) 〜 24 日(日)
会  場
COEX(韓国総合展示場) Hall A
主  催
大韓出版文化協会
出展社数
国内 245社(昨年 276社)
海外 91社(昨年 80社)
参 加 国
32ヵ国(昨年 17ヵ国)
フランス、台湾、イタリア、ロシア、ドイツ、イラン、ハンガリー等
入場者数
発表なし(昨年 202,297人)
テーマ国
チェコ

※ ( )内は2017年実績

 

全  体
 今回のソウル国際図書展は、来場者倍増を遂げた昨年の新路線を引き継ぎつつさらに「拡張 – New Definition」をテーマに掲げ、ライトノベルやオーディオブック等「伝統的な意味での図書」以外のものにフォーカスが当てられた。

 


 ライトノベル特設ブースは人気作品の登場人物が大きく描かれてとりわけ目をひいた。展示・販売されているのはKADOKAWA、SBクリエイティブ等ほとんどが日本の作品だという。金・土・日には今回の図書展限定版ポスターやグッズなどの販売に加え、『デート・ア・ライブ』の著者、橘公司氏ら人気作家のサイン会も行われたため、数万人と思われるおびただしい数のファンたちが会場の外に長蛇の列をなし、数時間待ちで求めるものを入手していた。

 

 

 地元韓国からはもちろん、このためにわざわざ日本や台湾、中国などからもファンたちがやって来たという。韓国独自のライトノベルは、現在育ちつつある最中とのことだ。ちなみに今回日本ブースでアテンダントをしてくれたインヨンさんもライトノベルをよく読み専門家並みに事情に詳しいが、自分でも執筆を試みたりもしているという。オーディオブックは、あちこちのブースで作品試聴のためのヘッドフォンを目にしたのに加え、スタジオが設けられていて自分で録音して作成するコーナーが人気だった。「ライトマガジン」という、様々なジャンルで新しいライフスタイルの提案をコンセプトとした独立系雑誌出版社を集めたコーナーもあった。

 

 

 図書展会場でも割引販売が認められていない韓国では、来場者は純粋に図書を楽しむためにやって来る。大幅割引販売で大勢の人が押しかける図書展もよいが、一度に様々な本を目にし、自分にとっての「掘り出し物」たちとの出会いに期待してやってくる、ここはそのような本当に純粋な意味での「図書展」である。残念なことに終了後主催者から、一日に何回か出入りした人も含めて数えてしまったため今年は入場者数を公表しないと発表された。しかし連日会場にいた人達の意見を総合すると、先述の、ライトノベルポスターやサインを目当てに来た人達を除いても(彼らは別扱いで、入場者にカウントされていない)、昨年以上の来場者があったのではないかと思われるのこと。主催者からは売上も昨年比15%増と聞いた。

 

商談ブース
 日本からは、ポプラ社が単独ブースで、1m幅ブースではトーハン、NHK出版、笠倉出版社、東洋経済新報社が出展。他にも主催者から招待を受けた多数の出展社があった。どの社も平日の3日間は朝から晩まで狭い幅のブースにびっしりと人が詰まってミーティングを行っていた。今回の商談に関して各出版社のビジネス評価はまあまあ良い〜非常に良い、という回答。安定して日本の作品を買ってもらえているようだ。どの社も一押し作品をメインに売り込むべく、周到な準備をしてミーティングに臨んだ。なお今回も商談ブース出展に際して「コンテンツグローバル需要創出基盤整備事業費補助金J-LOP4」を申請し、各出展の費用軽減を図った。

 

 

 

日本ブース
 今年の日本ブースは、従来の独立行政法人国際交流基金本部に代わって現地の同ソウル日本文化センターにより設けられた。27uを展示スペースと販売スペースに分け、教保文庫が主に売れ筋ジャンルを揃えた日本の図書販売を行い、売上は前年度比5%増の14,546,300ウォン。展示スペースでは売れ筋以外のジャンルも含め、来場者に幅広く日本の本を紹介した。「日本の小説が大好き。神保町に行っていろんな作家の昔の全集も買いたいが、なかなか東京まで出かけられない。本の重さで家の床が抜けそうなのが悩み。」と話し分厚いハードカバーの小説を6冊も買い込んでくださった男性をはじめ、大量に購入し、持ち帰るのが大変そうな人も多い。本好きのスタッフも、韓国でもベストセラーとなっている『君の膵臓をたべたい』の電子版をすでに購入して読了・所有しているにもかかわらず、内容の文章はどれもすべて同じなのに、そのハードカバー、文庫版、この図書展のために作られた特別限定版の3種類をここでさらに購入していた。どの国でも本好きの取る行動は同じようだ。
 日本ブースにいると、自作品のライツや現物を売り込む相談を多く受けるのが他国では普通だが、地方で独立系書店を開業していて、展示されていた児童書を見て自分の店に置きたいので仕入れたいという人、ライツの問い合わせ、買いのエージェントとして紹介してほしい等、韓国ではありがたいことに買いの問い合わせも多い。

 

 

 

所  感
 日本ブースのアテンダントをしてくださるのは毎回優秀な若者達だが、今回のインヨンさんは、本好きで将来日本の出版社で編集の仕事に就きたいので、それを目指しまずは日本の会社でのインターンシップや韓国で業界の経験を積むことを始めている。ヘリさんは日本の映画やドラマ好きが高じて、セリフを韓国語に翻訳し字幕を作成する仕事を目指している。どちらも寸暇を惜しんで日本の本やコミックを読み、映画やドラマを見ていて専門家のように詳しく、日本ですぐにもその仕事に従事できそうなレベルである。日本語力もハイレベルなのは言うまでもない。政治的には悪化の一途をたどっているような両国関係も、現実にはここまで来ているのだとあらためて感慨深く感じた。毎回報告書で述べているように、韓国は、出版・本に関しては日本にとって大変ありがたいお客様で、特別に重要な国である。日本の出版界も感謝の気持ちを忘れず、何かお返しできることをしていくべきと思う。

 
   
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