一般社団法人 出版文化国際交流会 Publishers' Association for Cultural Exchange (PACE), Japan 本文へジャンプ


シャルジャPublishers Conference版権商談会


報告:佐藤 佳苗(出版文化国際交流会)



期  間
2018 年 10 月 29 日 〜 31 日

 

 出展環境の良さや主催者側の気前の良さで近年話題になっていたシャルジャのPublishers Conference版権商談会について、2018年8月末の北京ブックフェア会場・シャルジャの出展ブースにて問い合わせたところ、「今回日本がシャルジャ図書展のテーマ国なのだが、その前2日間にわたって行われる版権商談会に日本からの参加がないため、ぜひ各社に声がけし参加を促してほしい」とシャルジャ書籍庁担当者より強い要請を受けたことをきっかけに、急遽弊会が参加者を募り取りまとめることとなった。結果的に日本から14社17名がシャルジャ事務局側の招待を受け、10月29〜31日、UAEのシャルジャ首長国(ドバイのすぐ隣) Chamber of Commerce並びにExpo Centerにて、2日間に渡るPublishers Conference並びにシャルジャ国際図書展のオープニングセレモニーと図書展視察、という計3日間のプログラムに参加した。日程がちょうど東京版権説明会と重なってしまっているため、「シャルジャにもぜひ行ってみたいのだが」と言いつつ申し込みを断念した社も多かった。

 

 

 

Publishers Conference
 2日間にわたり午前中のセミナー、昼食、午後の版権商談会参加(各社テーブルと椅子2つを使用できる)、夕食を兼ねたその後のプログラム、最終日の図書展オープニングセレモニー参加と図書展視察、この一連のイベントが誰にでも無料で提供される。さらに、参加者は一般書4,000USドル、児童書1,500USドルを上限とした翻訳支援が受けられ、しかもこれはアラビア語へ/からに限らず、どの言語間でもOK、という大変有難い支援まで付いている。今回日本からの参加者は、開催1か月前という直前申し込みだったにもかかわらず航空券代や宿泊費、現地送迎も招待が適用され、費用は一切負担せずにすんだ。参加条件は、Rights Holderでカタログを提示できること、申し込みや本番においてすべて英語でのやりとりが可能なこと、である。

 


 年々参加者が増えているようで、今回は世界各国から500名近いとのこと。やはりアラビア圏からが多い印象だが、インドや、日本からは遠い存在である中央アジア諸国も目立つ。いわゆる欧米メジャー出版社、特にイギリスからの参加者も多いし、中国やインドネシアといったアジア諸国からも毎年来ているそうだ。参加登録もカタログ提示も商談会アポのアレンジもすべてオンライン上で、登録後すぐに相手よりアポの申し込みが入り、自動的にスケジュール表に組み込まれていく便利なシステムである。自分がアポを申し込みたい相手がスケジュール一杯で無理と言われても、団体行動なので食事時や休憩時間などに会うこともできる。

 

版権商談会
 弊会は通常、海外の図書展では各社の出展お世話をし、自ら版権商談することは当然ないのであるが、今回は商談が参加前提であるため、自らプレイヤーとして日本の図書を紹介することにした。できれば会員社全社の一押しタイトルを取りまとめ紹介したいところであるが、本番まであまりの準備時間のなさに、取り急ぎ独立行政法人国際交流基金が委員会を設けて選出し諸外国に翻訳出版を促しているカタログ『Worth Sharing』掲載の日本現代文学/ノンフィクション作品を紹介することにした。日本からの参加社は、アラビア圏に限らず欧米やロシアなどからの相手とも商談していたようだが、弊会へはエジプト複数、レバノン、UAE、インドの出版社からアポ申し込みがあり、いずれもまずは日本の文学、それも今の日本の様子がわかるような作品をと、次にノンフィクションやコミックについても欲しい、探していると問い合わせを受けた。先方の問い合わせが具体的ならば該当する情報をお渡しして、それが商談会に参加している版元さんならばもちろんすぐにお引き合わせをし、そうでないところは帰国後連絡を入れるようにした。まだ漠然としたものならエージェントさんもご紹介。古典や漱石など名作を除いては、日本作品のアラビア語での出版はまだまったくこれからの現状であるが、その後5作品にオファーを出してきた社もあり、こんなにも熱心に関心が寄せられるとは正直驚いている。これも、前述の翻訳支援が受けられるからに他ならないだろう。

 


 アラビア圏の出版中心地は何といってもエジプト、そしてレバノン、シリアで、開催地UAEをはじめ湾岸諸国はまだこれからであるが、石油や天然ガスで潤い裕福なのは湾岸諸国のみである。シャルジャの、自らの富でアラブ諸国の出版を盛り立てようとする志には感謝しなければならない。さらに言えば、自国の作品を諸外国語に翻訳する際に助成をするというのが世界的に見て普通であるところ、シャルジャの翻訳助成はどの言語間でも申請可能で、世界的な出版交流を援助してくれる、本当に太っ腹なシステムである。

 

 

 

シャルジャ図書展
 プログラム最終日に開会した図書展は、毎年約200万人が訪れるとのことだが、アラブ諸外国からは多くの出展があったものの、一見してそれ以外の地域からはなく、「国際」とは言い難い。比較をすると首都であるアブダビの図書展のほうが国際的と言えるだろう。しかし、こちらのほうが昔から国内やアラブ諸国からの人達がやってくる、より伝統のある図書展だそうだ。シャルジャは図書展よりも、世界中から参加者がやって来るPublishers Conferenceのほうがよほど「国際」的で、第二のフランクフルトを目指しているそうだが、費用の削減を図りたい参加者は多いであろうから、いずれそうなっていくのではないか。

 


Sharjah Book Authority提供


 シャルジャ図書展でテーマ国としてスペースを提供されたという日本は、入り口すぐの場所を割り当てられ、紀伊國屋書店ドバイ店が出展して英語版コミックをはじめ日本の図書を販売した。それ以外は日本のスイーツやお茶、梨、鯉を扱う店などばかりで、図書展会場において無料で提供ならまだしも飲食物の販売が目立つテーマ国というのは少々違和感があった。しかし日本大使館によるイベントエリアでは中島京子、中村文則、湊かなえ、宮下奈都ら有名作家諸氏による連日の講演会・サイン会をはじめ、豆本作家や織物作家らによるワークショップなども行われ、イベントの方は大いに盛り上がり、日本の図書や文化をしっかりアピールできたようだ。

 




 オープニングセレモニー前には、紀伊國屋書店ドバイ店の平田支店長に日本からの参加者有志でお目にかかり、質問をさせていただいた。同店はショッピングモール内のより良い場所に移転し、さらなる売上アップを目指すと同時に、他都市や他の湾岸諸国への出店も考えたいという。2年前と比べ、和書・アラビア語図書を減らし、英語図書の取り扱いをより増やしている印象だ。

 

所  感
 日本の参加者からは、「すでにオファーももらえて、本当に行ってよかった」「こういう売っていく場もあるとわかったので、今後は社内で英語でのカタログ作成に努めたい」「近隣アジア諸国以外に売り込んだのは初めてだったが、今後は広い世界にも目を向けて力を入れていきたい」「とにかく楽しかった、来年もまた絶対参加したい!」等、肯定的なコメントと再訪を誓う声、そして今回自分たちを費用をかけずにあるいは低予算で世界の人と商談ができる場所へ、アラビア語圏やインド、中央アジアという新しい世界へ連れて行ってくれた、と弊会に対する感謝のお声を多々頂いている。次回以降、参加社はさらに増えていくことだろう。アラブ圏の特徴なのか準備段階でのメール問い合わせに回答が来ず我々皆イライラさせられたり、現地ではアルコールは持ち込みも禁止で呑み助さんは少々我慢を強いられる等、承知しておくべき点もある。
 個人的には、世界中から人が集まるが別行動のフランクフルトと異なり、参加者が期間中ずっと一緒で同一行動となるシャルジャのPublishers Conferenceでは「同じ釜の飯を食う」感覚が芽生え、参加者同士が気軽に話かけ合いネットワークが生まれるのが、何よりもこのプログラムのすばらしい点であると感じた。食事中や移動のバスで隣に座った人、果てはたまたま同じエレベーターに乗り合わせた人と話しこみ関係が始まる、というのはとにかく楽しく、このような機会を世界中の大勢の人に提供してくれるシャルジャ、その首長には感謝の言葉もない。ご自身も研究者であり本を書く首長や、出版社を経営しIPAの副総裁でもある王女様の、出版や世界中の図書交流、読書推進にかける思いは並々ならぬものがあり、オイルマネーの使い道は他にいくらでもある中、図書や出版に投資してくれる姿勢には本当に頭が下がる、誠に有難い話である。

 


シャルジャのスルターン・ビン・ムハンマド・アル=カースィミー首長


 また普段はご一緒することのない日本からの参加者とも、到着日には一日中一緒に現地書店巡りをし仕事の話をし合うなど、大変勉強になり、大いに刺激も頂いた。プログラム3日間と合わせ、非常に密度の濃い、忘れられない時間、貴重な経験となった。すべての方々に感謝申し上げたい。

 
   
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